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    小谷の店では実にあらゆる品を売つていたが、その中には僅かだが薬品類もあつた。したがつて、高間医院は小谷にとつて多少のお得意先でもあつた。今では、小谷は心易立てに注文のあつた薬品を「店主自から」ぶらさげて房一の所へ持つて行き、そのまゝ話しこむやうになつている。

    「え、御老人、どうしました?苦しいですか」

    二人は岸に着いた。

    徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。

    半シャツの男が進み出た。

    「永いこつてすよ」――そのきつぱりとし、そのためにかへつて本当の永さを、あのつきることのない、何かしらにみちた前方の日々を現しているその云ひ方が、ひどく房一の頭に残つていた。

    と、房一は練吉の顔を見て思ひ出したらしく、

    「梨地から水神淵へ降りる路ができたからね、そこへ出れば、帰りはずつと楽だ」

    間もなく房一が帰つて来たらしい。

    「いや、どうぞ構はんで下さい」

    川沿ひに細長く続いている河原町の通りは、地勢のせいでゆるい下り勾配をなしていた。所々で屋並みが切れて、そこには茶畑があつたり、空樽が乾してあつたりするかと思ふと、次の空地にはどこの家で使つているのか判らないやうな大きな井戸がその円く肥つた腹のやうな焼物の縁をたゞあつけらかんと日に照されていたりした。

    それはさうだ、永いことにちがひない、と房一はゆつくりと歩きつゞけた。多分、彼は彼で、自分のこれからの生涯を、その計りがたく、茫漠とした行手を見ていたのだらう。

    「先代がぽつくり死にましてね。おかげでこんな所へ引つこむやうになつてしまつたんですが」

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