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小谷は酔つて来たのだらう、何度も同じ手真似をして見せた。
「それに――」
「君は昨日その九州から来た連中を赤山へ案内して行つたちふぢやないか」
今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。
二
「誰かと思つたら――」
「やあ、しばらくで」
彼は道平の息子で、且つ医者である。これほど病人にとつても周囲の者にとつても安心できることはなかつた。彼等は医者としても房一を信頼し切つていた。若し仮りに、房一が医者としての手落ちを来し、そのために死を招いたとしても、恐らく病人は安んじて瞑目したであらう。なにしろ、息子の手にかゝつていることだつた、これ以上の幸福があらうか――房一が診察している間ぢゆう、ぢつと身体を任かせ切りにしている道平の半開きの眼が、まだ口が利けないので、房一が何か云ふたびにうなづいて見せるその弱々しい、うるんだ眼が、さう云つていた。
「あれらしいのよ」
「今、あんたの便をしらべてみたがね」
彼は背だけでなく、腕と云ひ胴体と云ひ、又その両脚と云ひどの部分もすべていやに長かつた。その手を差しのべて、房一を座蒲団の上に招じると、自分も対むかひ合つて座を占めた。すると、又もや長い両膝が蒲団の上からはみ出して、房一の方に向いてにゆつと二つ並んだ。
それは、やつぱり何となく「役所」臭かつた。
房一は急いで膿盆をひきよせた。